認知症高齢者介護の最前線で忙しく働く現場スタッフたち。長引くコロナへの対応に試行錯誤しながら、利用者さまに優しいまなざしを向けています。グループホーム「明日香」の施設長を務める平野さんと、「今日香」の副施設長である渥美さんに、利用者さまとどのように向きあい介護をしているのか、おふたりが日々考え、実践していることをお聞きしました。
──毎日の介護でどのようなことを大事にされているのか、利用者さまにどのような時間を過ごしていただきたいと考えているのか教えてください。
平野さん(以下、平野) 自立支援を大切にしているので、なるべく利用者さまご自身でできること、例えば、お掃除や食事の準備などに参加いただいています。
──先ほども、キッチンに立って料理されている利用者さまを見かけました。
平野 はい。なるべくそういった時間をつくるように心がけています。コロナ禍で運動不足による筋力低下も心配なので、一緒に運動したり、天気が良ければ庭に出たりもしています。
──自立支援は大事だけれど、一方でリスクがあると指摘する人もいます。
渥美 立って何かするのが難しい方なら、イスに座ってテーブルで洗濯物をたたんでいただくなど、工夫しながらできるだけ危なくない作業をしていただくよう配慮しています。
平野 明日香も同じですね。立ち仕事が難しい場合は、どうしたらできるのかカンファレンス内で検討し、できる環境を整えたり、道具を用意したりします。刃物などの危険なものは、使い終わったら職員が必ず片付けるといったルールを徹底しています。
──病院のように、あれもこれも全てお世話してくれる訳ではないんですね。
平野 もちろん動ける方という条件は付きます。人間って、何かしてもらうと劣等感を抱きやすくなってしまうと思うんです。利用者さまの「何かしてあげたい」「してあげた」という気持ちを大切にしたいので、職員が利用者さまに手伝っていただくこともあります。男性の利用者さまだと、重い荷物を持ってくれることも(笑)。一方的にサービスを提供するというよりも、一緒に支え合いながら、お互い様の気持ちを大切に生活することを心がけています。